ブルーベリーの育て方 鉢植え編
初心者でも育てられるブルーベリーの鉢植え栽培と品種の特徴について。ブルーベリーは酸性土壌を好む性質があり重要な摘蕾と剪定について図入りで考察も含めて必要性について詳しく解説しています。ブルーベリーは自宅のベランダや小さな庭先で簡単に育てられる果樹です。ブルーベリーは初心者の方におすすめの果樹です。梅雨から初夏にかけて収穫できるブルーベリー、みなさんも栽培に挑戦してみましょう。
このページではちょっと難しいことも書いています。ご安心ください、私のような初心者でも以下のことを実践するだけで育てられました。
目次
- ブルーベリー
- 一年間の管理の概要
- 品種の選び方・種類
- ブルーベリーの土
- プランター栽培
- 肥料
- 店ごとの苗木の違いの比較
- 水やりの方法
- 挿し木の方法
- 葉芽と花芽の見分け方
- 植え替え
- 剪定方法
- 摘蕾の目安
- 病害虫について
- 受粉方法
- 収穫時期の見分け方と収穫のタイミング
- 育て方の本のご紹介
- おすすめの苗木のご案内
- 関連記事
- 参考文献
- おもしろブルーベリーコラム
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- このページにリンクする
ブルーベリー
ブルーベリーはツツジ科スノキ属の植物で梅雨から夏にかけて青紫色の甘く小さな果実をつける家庭菜園でも人気が高くグローバルスタンダードな果樹です。ブルーベリーは長きにわたり北米の先住民が栽培してきました。1908年に植物学者でアメリカ農務省のチーフボタニストだったFrederick Vernon Covilleがブルーベリーを研究しアメリカ国内で発表しました。コビルは1910年にブルーベリーの酸性土壌の重要性と他家受粉性を発見して発表し1916年までには栽培法を確立し商業生産がはじめられミシガンとブリティッシュコロンビアが二大産地となっています。ブルーベリーが日本に導入されたのは1951年(玉田孝人)で本格的に栽培され始めたのは2000年以降になり「目の病に効く」「目が良くなる」という業者の仕掛けたデマが日本中に広まってからです。2010年には生産国で栽培量が激増しアメリカとカナダとチリで世界の生産量の大半を占めています。今では加工用の果物のひとつとしてブルーベリーは健康に良いイメージとともにすっかり日本に定着して長野県が最大の産地となっています。
ブルーベリーのタイプ
ブルーベリーの苗木は異なる原産地の原種と交配の系統から複数のタイプに分けられます。ブルーベリーはおおむね北海道から鹿児島県までの沖縄など亜熱帯以外の全国で栽培可能です。道央(旭川、富良野などの内陸部)はノーザンハイブッシュあるいはローブッシュの栽培が適しています。冷涼地では厳冬期に枝折れしますので雪囲いが必要です。
- ノーザンハイブッシュ
- ノーザンハイブッシュとは、アメリカ東北部を原産とする品種群で耐寒性のある系統で-25℃くらいの寒さに耐えられます。夏の暑さに弱いという欠点があります。学名はVaccinium corymbosum L. です。原種はカナダ西部およびアメリカです。
- サザンハイブッシュ
- サザンハイブッシュとはノーザンハイブッシュとアメリカ南部の野生種を掛け合わせたもので-15度くらいの寒さに耐える品種もあり、暖かい地域に適応できるという長所があります。学名はVaccinium darrowiiです。原種はアメリカ南西部のアラバマからフロリダ、ジョージア、ルイジアナそしてミシシッピに分布しています。
- ラビットアイ
- ラビットアイとはアメリカ南部を原産とする暖地適応性と土壌適応性を兼ね備えた品種群です(土壌適応性のない品種もあります)。学名はVaccinium virgatumです。原種はアメリカ南西部のカリフォルニアから西テキサスからノースカロライナに分布しています。
- ローブッシュ
- ローブッシュは日本では半樹高やオーナメンタルベリーとも言われ、非常に耐寒性が強い特徴があり品種によっては-30度にも耐えられるものがあり北海道でも栽培可能です。樹高は35cmほどであり、原種はカナダ東部から五大湖西岸にかけて分布しています。学名はVaccinium angustifoliumです。
- ハイブリッド
- ハイブリッドブルーベリーとは、上記4種の系統を掛け合わせて交配して作出した雑種です。大抵は(売るために)ノーザンやサザン、ラビットアイの中に分類され混乱の原因となっています。
一年間の管理の概要
秋~冬頃の休眠期に苗木の購入と植え付け、木の剪定を行います。12月上旬または3月上中旬に既存の木の植え替えを行いつつ花芽の数を調節します。3月の植え替え時に有機肥料を土の表面に置いたり土に混ぜます。4月に花が咲き5月と6月と9月と12月は有機肥料を追肥します。5月から8月にかけて果実を収穫します。7月と8月は1日2回の水やりを行い必用があれば遮光します。栽培の管理サイクルは毎年この繰り返しです。1月と2月の作業は栽培者の健康上のリスクを考えると、特に高血圧の人は行うべきではありません。
品種の選び方・種類
ブルーベリーは品種によって果実のサイズや風味、木の勢いや土壌適応性などさまざまです。初心者向けのおすすめ条件は、樹勢が強く、収穫量が安定して多い品種のうち風味がよい品種がおすすめです。
より詳しい品種特性については下記のページをお読みください。
ノーザンハイブッシュ系とサザンハイブッシュ系は基本的にピートモスという酸性の用土(土というより植物が堆積したものでウイスキーの風味づけに用いられるもの)を使って栽培します。ラビットアイ系は土壌適応がよい品種もありますが、おおむねハイブッシュと同じPHが求められます。いずれの系統も弱酸性で水はけがよく適度に湿った土壌を好みます。系統によらず、土壌適応のある品種であれば露地栽培可能ですが、そういった品種は限られています。いずれも苗木が小さいうちは植木鉢での栽培をおすすめします。
育てる苗木の本数
初めてブルーベリーを栽培する方は、枯らせたらどうしようと心配して二本だけにしがちです。ですが、ブルーベリーの苗木1本あたりの鉢植え栽培での収穫量は、栽培3年目で1本あたり、よくて200gほどしか採れません。ですので1kgくらいのブルーベリーを3年以内に収穫したい場合は5本くらいの苗木から育てられることをおすすめします。ブルーベリーを育てたいのにたった二本の苗木しか栽培しないことは時間と人生の無駄になり後で後悔することがあります。栽培3年目でシーズン総合1kgの収穫量でも週に換算すると毎週50gずつくらいしか採れませんので、これでもかなり物足りないといえます。やはり数品種を一気に育てたほうが・・・後々楽しいと思います。
初心者の品種の選び方
ブルーベリーは本場アメリカの品種改良が盛んで現在も続々と新品種が日本に輸入され紹介されています。はじめて品種を選ぶ方は苗木の基本的な受粉樹セット(ページ下へジャンプ)をおすすめします。栽培にも慣れてきてもっといろんな品種の栽培に挑戦してみたいという方には「もう迷わない!ブルーベリーの品種選び入門編」を一度お読みになられることをおすすめします。 ちなみに私がはじめから育てておけばよかったと思う市販の品種は、ノンパテント種(挿し木可能な種類)では風味に定評のあるレガシーそして世界で最も多く生産されたスタンダードなブルークロップやレガシー、ブルーレイ、ブルーゴールド、エリオットとトロやデューク、オニール、ラビットアイの定番品種で栽培容易なパウダーブルーあたりがおすすめです。パテント種などの詳しい味覚の比較については私の備忘録「ブルーベリーの品種一覧 専門編」ページにまとめていますのでよければご覧ください。
直立と開張性の違い
ブルーベリーの特徴である樹形の直立性タイプににも欠点があります。それは木の中心部が高密度となり込み合ってしまうことです。開張性タイプのブルーベリーにも欠点があり、枝が垂れやすいというデメリットがあります。直立性と開張性のブルーベリーの鉢植えの写真をそれぞれ載せました。直立性は樹形を整えやすく収穫しやすいので大量生産に向いています。
こちらは直立性のブルーベリー、ミスティの写真です。ご覧の通り、枝が空の方角を向いて立つように伸びています。内部が込み合いやすいですが、開張性と比べるとプランター栽培の管理はしやすいと思います。
こちらは開張性のブルーベリー、スージーブルーの写真です。ご覧の通り、枝が横方向を向いて立つように伸びています。鉢栽培では少々仕立てるのが難しいと感じます。そして開張性のこのブルーベリーは不安定で少し風が吹けば何度も植木鉢が倒れます。新しい主軸枝も横方向に伸びようとすることがあり、注意深い観察を要します。
果実の大きさの違い
ブルーベリーの1粒の果実の大きさは1円玉サイズから5百円玉までさまざまです。中粒サイズより小さな実は収穫する個数が多くなり果皮の割合が多く、アントシアニンを効率よく摂取できる反面、1粒ずつ洗う時がたいへんです。500円玉くらいの大きなサイズの実は目立つので野鳥や害虫に見つかりやすく、木の体力を消耗しないように結実を管理することに気を遣います。大粒品種のほうが収穫や洗浄、品質の確認を楽に行えます。
風味の違い
ブルーベリーの味覚には大きな4つの特徴があります。甘さが目立つもの、酸味が目立つもの、果皮が目立つもの、種子などのざらつきが目立つものです。加齢により味覚の感受性が低下した男性高齢者(2008, 三橋ら)にはオニールのような酸味なく強い甘味が際立つものが好まれます。味覚の感度が良い若い人や洋菓子づくりにはエリザベスのような酸味や芳香のある品種が好まれます。皮が気になりざらつきが目立つものは敬遠されます。時には砂を噛むような食感のベリーがラビットアイ系の中にあります。ほかにはブリジッタのように苦みを含むものもあります。香りのある品種もあり口の中で芳香が拡がります。味覚には個人差やバイアスがあるのでどれが最高の品種か論じることに意味はありません。商業的には輸送に適した硬さや保存性があり、青果として出荷するため粒揃いが良く糖酸比が優れ香りのある品種や好まれ、冷凍や加工用には収穫量が多いなど生食とは異なる特性が求められます。製菓用には酸味の利いたベリーが適しています。
耐病性
ブルーベリーの茎は細菌に対する抵抗性が弱い傾向にあります。エメエラルトとジュウェルなど一部抵抗性のある品種がありますので、無農薬で栽培される方は茎枯病に対する抵抗性品種の栽培をおすすめします。この茎を枯らせる細菌は一度感染すると周囲のブルーベリーの木に拡がりますのではじめから未感染の苗木を入手されることをおすすめします。新品種といえども抵抗性の弱さが報告されていますので、詳しくはアメリカの研究論文または筆者作成の品種一覧表をご覧ください。
ブルーベリーを悩ます病気にステムキャンカー(stem canker)とステムブライト(stem blight)という病気があります。これらに感染した木は元気がなくなり弱って枯れてしまいます。病気そのものを防ぐ方法はありませんが、毎年絶えず新しい枝を生み出し枝を更新することが木の健康に欠かせません。詳しくは病害虫の章をご覧ください。
無農薬栽培
結論から先に申しますと、ブルーベリーの無農薬栽培は可能ですが、同時に不可能であるといえます。ブルーベリーを無農薬で栽培し続けるとほぼ100%病気に感染します(出典:2016, 私)。病気に感染した株は収量が落ち菌やウイルスの宿主となってしまいます。その理由については後で詳しく説明しています。ブルーベリーの収穫量を安定させるためには最低限でも有機栽培用の農薬が必要です。ブルーベリー栽培は病気を無視して無農薬での収穫を喜ぶことも愉しいですが、ブルーベリーの木を大事に育て続けるためには細菌病やウイルス病に対応する必要があります。どうしても無農薬で育てたい時はミレニアやエメラルド、ジュウェルのような抵抗性品種がおすすめです。
ブルーベリーの土
ブルーベリーは酸性土壌(PH4.0-5.0)で有機質の土を好みます。ブルーベリーの専用土のほか、ピートモスという酸性の有機用土を用います。砂質土壌でもPHを調節して有機物マルチをすれば栽培可能です。泥を含む土は栽培に適していません。ブルーベリーの根は細く密で繊細なので、加湿にならないようにココチップやパーライトや軽石などを混ぜて空気が入るようにします(使わなくても問題はありません)。ピートモスの使用は環境破壊を引き起こすため、ココピートなどの土を酸性の水に浸して栽培する方法がアメリカで確立されています。家庭用ではクエン酸が入手しやすいです。鹿沼土は酸性ですが私の経験では根の張りが明らかに弱くなりますので主土とすることはおすすめできません。注意しなければいけないのが人工焼成物です。パーライト(根の防腐効果があります)やバーミキュライト(これはおすすめしません)のような人工焼成物の粉塵の出る素材を扱う際は防塵マスクをして霧吹きで水をかけるなどして粉塵を吸い込まないように、袋を置きっぱなしにして浮遊粉塵を飛散させないように気を付けましょう。
例:ブルーベリー専用の土 + ココチップ または バークマルチ
例:ピートモス + ココチップ + パーライトまたは軽石ほんの少々
例:ココピート + ココチップ + 硫安、クエン酸など
例:砂質または火山灰土壌 + 有機物またはプラスチックマルチ + 酸性の水で潅水(アメリカ南部沿岸やチリなど)
有機用土は2年ほどで腐ってしまうので、1~2年に一度の用土交換が必要です。
露地栽培の場合は新しく根が伸びる場所に用土を追加します。
表面は乾燥と地温の上昇を防ぐため、バークチップやもみ殻などで10cmくらい厚く覆います。ブルーベリーの栽培本には必ずといっていいほどバークチップがすすめられていますがバークチップにシロアリが生じる可能性も0ではないので趣味で大量に使うことは個人的にはおすすめしませんし、なくても大丈夫です。
土壌を選ばないタイプのラビットアイなどの品種は、安価な用土で済ますことも可能ですが味への影響があるかもしれません。
鉢底には、鉢底石を敷くと水はけがよくなりますがブルーベリー栽培では特に不要です。
ピートモスの使い方
ピートモスとはミズゴケや樹木などの植物が堆積した土でいわば腐葉土がさらに分解されたようなもので酸性の園芸用土です。ピートモスは水分をたっぷり含む性質がありブルーベリーが喜ぶ土です。ピートモスの使い方は、まずバケツなどの容器にピートモスを入れて適度に水を入れて手でもむようにしてかき混ぜ湿らせます。時には軽石やパーライトやヤシを粉砕したチップを混ぜて通気性を確保します。しっかり混用した土をブルーベリーの根に密着するようにして植えこみます。ピートモスは産地によって堆積した植物の種類が異なります。カナダ産のピートモスにはミズゴケ以外の樹木も含まれていますので栄養豊富で細目と中目があります。鉢栽培の場合はカナダ産、露地栽培の場合は北欧やロシア産などミズゴケの割合が多く腐食が遅いピートモスと用途に応じて使い分けることも可能です。長繊維のピートモスは保水力が弱くこまめな水やりが必要となり夏の日中に在宅しない方には適しません。ブルーベリーの原種が北米に分布していることからピートモスの産地もカナダ産と相性が良いと思います。
資源に限りがありますのでピートモスを使わない栽培方法がこれからの主流になっていくと思われます。
初心者用におすすめのブルーベリーの土
ブルーベリー専用の土を利用すると、土の配合の手間が省けて便利です。スリット鉢を利用しますと、根の張りがよくなります。スリット鉢の場合は鉢底石は不要です。営利栽培では大型のNPポットや収穫コンテナが使われているようです。配合済みの用土などの購入で気を付けたいのが土に何を使っているかについてです。とあるピートモスと書かれた土をよく見ると汚泥(下水の汚物)を混用していると書かれていたり、同社の別のパッケージは「など」と省略して書かれているので好ましくない素材が混入していないかよく確かめてから買いましょう。
しっとりふかふか瀬戸ヶ原花苑 ブルーベリーの培養土 25L |
バークチップS 2L |
ハスクチップ5リットル(ココナッツチップ) |
バークチップやハスクチップはブルーベリーの根を保護する働きがあります。ピートモスはブルーベリーの生育に適した土です。木材チップを使うと費用対効果が低下するというデメリットがあります。
中上級者向きの用土
環境に配慮したブルーベリーの用土です。 | カナダ産 ピートモス 3.8CU 細粒 売れ筋! |
ココナッツハスクチップ (2S-容量200L) |
ブルーベリーの品種が増えてくると、多めの用土を買われたほうが便利です。ピートモスにハスクチップを少量ブレンドすると通気性が高まり根張りがよくなります。ココピートを用いる場合は土壌を酸性に保つ必要があります。
特殊な用土
必ず必要というわけではありませんが、コストパフォーマンスなどを考慮して使用する頻度の多い土を紹介したいと思います。
ゼオライトは水やりの頻度が多い人におすすめの資材で多孔質な石が通気性を確保して根腐れを防止します。鹿沼土はお近くのホームセンターにも売られている安価な資材でPHを調整して通気性も確保します。鹿沼土はコスパが良いので筆者も少量ピートモスに混ぜて使っています。鹿沼土はあまり入れすぎないほうがよいと思います。より費用を節約したい時は秋のうちに田んぼに捨てられるもみ殻を確保しておくとよいでしょう。
土壌のPHを下げる方法
ブルーベリー栽培に欠かせない土壌のPH(ペーハー)を下げる方法は硫安を水に溶かして潅水する他に、PHを調整する市販の品を利用することができます。アメリカではSoil Acidifierというようなイオウを含むPH調整剤が売られています。硫酸カルシウムはイオウとカルシウムが混ざった固形の肥料で土中に混ぜて使うことが可能です。農協からサンドセットのような硫黄含有の酸度下降材を入手することも可能です。素材によっては非常に危険なものもありますので住宅から離れた場所で鍵付きの倉庫(火気や静電気のない冷暗所)に保管できない場合は手にされないほうが安全です。趣味栽培ではクエン酸や食酢など無難な範囲にとどめておきましょう。現代の日本は酸性雨が降るので雨水を濾過して使う方法も考えられます。
このようなPH降下剤があります。
プランター栽培
ブルーベリーをプランターで育てるために、初めての方はスリット鉢のプランターでブルーベリー専用の土を使って栽培されることをおすすめします。地面に直接ブルーベリーの苗を植えると雑草の処理などが間に合わず育ちが遅くなりがちになります。ブルーベリーを地面に植え付ける場合は草に養分を奪われないことや土壌適応性のよい品種を選ぶことが大事です。雨で裂果するような品種ではトマト用の雨除けキットなどを利用してもよいでしょう。表面にはバークチップなどでマルチングを行います。
スリット鉢
ブルーベリーのプランター栽培はスリット鉢が最適です。スリット鉢は酸素が根に行きわたりやすいので根のサークリング現象が出にくくプランター内に効率的に根が張り巡らされる優れものです。はじめは7号サイズからはじめて2年後くらいに10号のプランターに植え替え、その後は必要に応じて13号(スリット鉢の最大サイズだが高価)への鉢増しやコンテナの利用、あるいはそのまま10号のプランターで栽培を続けます。スリット鉢での栽培をやめると根が少なくなりますのでプランターを別のものに変更する場合はココヤシチップを入れるなど根に新鮮な空気が行くように対策を行います。
プランターのブルーベリーは庭の雑草の中にいても根が守られているので元気で安心です。雑草が保湿剤となり日差しや熱から根を守る役割をしています。
コンテナ栽培
ご家庭ではスリット鉢のプランターで十分かと思いますが、木を大きくしたい場合は大きなスリット鉢がないのでコンテナを使います。後述する群馬県の農家の方はこのコンテナの内側を波板で囲んで栽培されていらっしゃいました。コンテナ栽培のほうが通気性よく排水がスムーズにいくようです。
地植えの方法
地面にブルーベリーを直接植えつけるには土壌改良と毎年の土の投入作業そしてマルチングが必要です。ブルーベリーは浅根性ですので雑草を抜き取る作業が欠かせません。まず植えつける場所に穴を掘り、ピートモスやココピートやチップ、通気性資材のパーライトなどを投入します。このときに既存の土と混ぜ合わせずに専用の用土だけで育てるつもりで土を作ります。ブルーベリーが大きくなるたびに木の幅に合わせて専用用土を毎年追加していきます。土壌適応性の広いラビットアイでも庭土と専用の土とでは成長の度合いが異なります。表面にはバークチップや敷き藁などでマルチングを行います。地植えの間隔はどれくらい木を大きくするかによって変わってきます。順調に生育すれば3年後には1株あたり1メートル四方の面積が必要となります。地植えでたくさんベリーを収穫したい場合でも、はじめの3年間はプランターで株を十分に大きく育てることをおすすめします。
せっかく地植えしたブルーベリーのラビットアイ、収穫量が増えても種子がジャラジャラとしており場所ばかり取るので残念なことになっています。狭い庭では株の向こう側への立ち入りが難しく人を刺す害虫も発生するので収穫には困難が伴います。どのみち専用の土が必要となりコストは変わりませんので新品種への更新が行いやすいプランター栽培が無難です。どうしても地植えするのであればこのような不味い種類ではなくおいしい品種がおすすめです。
肥料
ブルーベリーの肥料は水に溶けにくい緩効性化成肥料あるいは定期的に有機肥料を少量ずつ施肥する方法が適しています。なぜなら保湿性の高いピートモスでは溶出量に工夫のない普通化成肥料はすぐに水に溶けるので、肥料の濃度が高まりすぎたり流れ出た水とともに養分が失われてしまうからです。有機肥料であれば1週間~2週間後あたりから効き始め、効果は30日適度持続しますが虫が肥料を餌に大量発生することがあります。油粕はチッソ成分を多く含み葉の成長を促しますがやり過ぎは禁物です。米ぬかはリン酸成分を多く含み果実や根の成長に関わり乳酸菌が含まれていますのでおすすめです(ズボラな私は生ぬかをそのままやってます)。葉を人工的に茂らせたいときは、硫安の薄めたものを施します。十分な暇がある場合は春から秋まで1か月ごとに有機肥料を少しずつ与えてみてもよいでしょう。
- ブルーベリーの肥料は長期にわたり、緩やかに効かせる肥料のやり方が基本です。
- 硫安やアルゴフラッシュのような微量要素入の液体肥料を水で薄めて5月と6月に液肥でやると葉の生育によく効き葉が大きくなります。ハイポニカとアルゴフラッシュは同等の効き目がありましたのでこれらの液肥は成木になるまでの生育に適しています。※液肥は藻類が発生するデメリットがあります。
- ブルーベリーの有機栽培(オーガニック)に挑戦するときは液体肥料などの化学肥料を使わないように注意しましょう。
- 液肥や化成肥料などの化学肥料を一度でも使ってしまうと有機栽培(オーガニック)とは言えなくなります。
- 私的な見解を述べますと、微量要素入り液肥より有機肥料(米ぬか+有機ペレット)のほうが甘味が出て味も濃いように思います。肥料は表面に置くだけで十分です。有機栽培で糖度を上げるにはバットグアノまたは骨粉がおすすめです。発酵油粕は10号鉢で元肥に大粒のものなら15粒程度、追肥にも同程度がちょうどよいでしょう。
高温などでブルーベリーの活動が低下しているときは、肥料過多にならないように気を付けます。肥料の効果期間は肥料の種類や環境によって異なります。
プロトリーフ ブルーベリーの肥料 700g人気のブルーベリーの肥料です。 | 協和 ハイポニカ液体肥料 500ml調合が面倒でも間違いなく効きます。 | 朝日工業 硫安 700g硫安はとても安価な肥料で水で薄めるなどして使います。 |
余談ですがブルーベリーの肥料について、私の場合、発酵鶏糞などの畜糞肥料は使わないようにしています。家畜の肥料は臭いがすごいため臭いがベリーに付着することを避けたいからです。油粕も元肥にうっすらと生のものを与えるだけでその後の追肥には既製品のペレット肥料を使っています。油粕は気温と湿度の影響があるため効果が発現する時期の予測が難しく扱いづらい肥料です。配合肥料も梅雨には汚泥のような悪臭を放つため、一概にどの肥料がいいとは言えません。液肥も与えすぎるとピートモスに苔が生じるため適量を把握しづらく、結局は肥効期間が長い化成肥料と米ぬかや骨粉かバットグアノなどのリン酸肥料を少量用いた組み合わせが最も無難であるように思います。
通販でブルーベリーの苗木が届いたら!?お店ごとの苗木の違いについて
ブルーベリーの苗木の状態は、作り手によって異なります。例えば大関ナーセリーのような専門店の苗木はほとんど剪定する必要がありません。この写真のような状態では枝を大きく切る必要はありませんので、むやみに剪定するとかえって弱らせてしまう可能性がありますので販売元に尋ねてみるのがよいでしょう。
予約販売で購入した大関ナーセリーの苗はハウス栽培なのかわかりませんが12月でも落葉していませんでした。通販では専門店でも希望しない形状の苗が届く確率は低くはありません。
それとは対照的な苗がホームセンターの苗です。ホームセンターで購入した苗は剪定したほうが元気になる場合があります。ホームセンターのブルーベリー苗はひょろひょろの枝が多数ついている傾向にあります。ホームセンターでは仕入れてから一年以上経過した苗も置きっぱなしであることがほとんどです。ですが、ホームセンターでこうした苗を買う魅力もあります。管理の行き届いていない苗を購入しても、翌年元気になり、勢いを取り戻す様子を見るのも面白いと思います。その復活ぶりは専門店で購入した苗に劣りません。※個人の見解です。(出典:2014-2015年, 私。)
注意・・・ホームセンターの苗木は適切に管理されておらず細菌に感染していることがありますので、病気の苗を購入すると他の苗木に感染してしまうリスクがあります。
水やりの方法
ブルーベリーの水やりは、土が乾いてきたらたっぷりあげるようにします。ブルーベリーは乾燥に強い品種と弱い品種、加湿に弱い品種があり、個々の性質に合わせて水やりします。用土の酸度を補うために、酸性の肥料(硫安・硫酸カリ)を溶かした水を与えることもあるようです(出典:確か・・・2011, 「ブルーベリーの観察と育て方」だったかな)。クエン酸も酸度調整に使えるのではないかと思います(出典:2016, 11, 私)。米のとぎ汁も良い液体肥料となるでしょう。ブルーベリーの水やりで気をつけるポイントは、根が加湿と高温にならないようにすることです。真夏、特に7月下旬から8月上旬にかけての約20日の間に発生します猛暑日は、寒冷紗で遮光したり、2重鉢にしたり、鉢に遮熱カバーを巻いたりすると温度上昇をいくぶん抑えられ水切れも和らぎます。猛暑日の間に雨が少ないと1日2回の水やりでは水分が不足して新しくて柔らかい枝が枯れてしまうことがあります。気温35度以上の猛暑日が続く場合はブルーベリーや植木鉢(プランター)に直射日光が当たらないように明るい日陰に移動したほうが安全です。次のリンクでは裂果を予防する簡単な方法を紹介しています。
挿し木の方法
ブルーベリーを増やす方法方法は春季の緑枝挿し、冬季の休眠枝挿し、接ぎ木、種まきなどの方法があります。いずれも一般的な樹木の増やし方と同じです。接ぎ木の台木はホームベルが一般的です。挿し木から始めると苗が市販の苗木のサイズまで大きくなるのに最低3年ほどかかります。感染防止のために、切り口には殺菌剤入りの癒合剤か木工ボンドを塗っておきましょう。春に挿し木する方法が一番簡単です。挿し木の成功率は写真右下のように小さな小枝が付いている枝のほうが高く写真中央の双葉の状態では失敗しやすい傾向がありました。
挿し木での注意点
発根促進剤のルートンは食用作物には適用されていませんので使えません。メネデールはブルーベリーにも使用可能です。培地にロックウールを使用の際には湿らせてから使うようにして見えない繊維が刺さらないように手袋と防塵マスクを着用し使用後は燃えないゴミとして廃棄します。費用や今後判明するであろうリスクを考えると人口繊維は使わないほうが安全です。理屈としては天然繊維の綿花を箱に詰めて挿し木に使っても同じでありセルロースが主成分なのでそのまま移植できると思います。ロックウールの代替として綿による挿し木を提案しているのは当ページのみです。百円ショップにもあるココピートへの挿し木が最も安価です。
ブルーベリーの葉芽と花芽の見分け方について
ブルーベリーの葉芽と花芽の見分け方は簡単です。葉芽は三角のチップ▲であり、花芽は丸いふくらみ●が特徴です。葉芽と花芽を見分けることは簡単です。ブルーベリーの葉芽と花芽の芽吹きの違いについてご説明します。葉芽の芽吹きは見た目ですぐにわかります。花芽の芽吹きは、蕾のようなものが数珠繋ぎで芽吹きます。花芽は1月~2月には既に丸く膨らんでいるのに対し、葉芽はおよそ3月から膨らみ始めます。
写真のようにブルーベリーの葉芽は葉が丸まったような状態で芽吹きます。ブルーベリーの葉芽と花芽は3月末あたりから、芽吹き始めます。
ブルーベリーの花芽は小さな蕾が数珠繋ぎのように伸びることが特徴です。
植え替え
植木鉢で育てているブルーベリーは一年に一回植え替えます。どうしても植え替えをすることができなかった場合は二年に一度の植え替えでも大丈夫です。ブルーベリーの用土であるピートモスはおよそ二年程度で朽ちて黒くなってきます。新鮮なピートモスに入れ替えることによりブルーベリーの根を新鮮に保つことが可能です。さまざまな理由から毎年の植え替えを強く推奨します。特に植木鉢の中にコガネムシの幼虫がいるかどうか確かめる作業は毎年必要かと思います。
植え替え時期
ブルーベリーの植え替えのタイミングについて。ブルーベリーの植え替え自体はいつでも可能です。ブルーベリーの根が生長している時期は、根を傷つけすぎないように気を付けましょう。ブルーベリーの葉が落葉し休眠している冬がブルーベリーの本格的な植え替えのタイミングです(落葉しない品種もあります)。ブルーベリーが落葉してから11月末から12月上旬または3月上中旬の植え替えが適しています。1月2月の植え替えは脳卒中のリスクが高まるため非推奨です(前のめりに身をかがめるとなりやすいです!)。北部の山地は雪に覆われるので厳冬期に作業を行う必要はまったくありません。ブルーベリーの植え替え時期は何月でなければいけないという決まりはありません。理屈では年内に植え替えを済ませておいたほが花芽に元肥を与えられ3月の根の伸長に間に合うということになりますが、そこまでデリケートな植物ではないので暖かくなってきてからの植え替えでも大丈夫です。筆者はいつも3月の後半に十分に温かくなってから植え替えをしています。
植え替えの手順
ブルーベリーの鉢植えを植え替える方法は以下の通りです。まず土と肥料(元肥)と植木鉢を用意して土と肥料を混ぜ合わせて水でたっぷり湿らせておきます。次にブルーベリーの株を植木鉢から引き抜き根の健康状態を調べて害虫がいたり土が匂ったりして問題があるようなら根を洗います。底を厚く削り取り表面の雑草と腐敗した土を削るかもみほぐして取りながら周囲もほぐして根鉢を植木鉢のサイズに合うように崩して調整します。鉢底に土を5cm~7cm敷き詰めその上に根を置いて株を手でしっかり持ちつつ周囲に土を入れて水を流して隙間を埋めていきます。土の表面に用土やウッドチップを敷き詰めて植え替えは完成です。植え替えのコツは底と表面を厚めに削ることと、表面に厚く用土を盛り付けることです。ブルーベリーは浅根性なので表面にも根が張っていきます。植木鉢も深さを追求するよりも広さを考えたほうがよいと思います。ブルーベリーの根の厚みは大体20cmくらいです。
用土と肥料の準備
まずピートモスまたはココナッツピートと肥料を準備します。植え替え時のピートモスの使用量の目安は直径30cm程度の植木鉢で1鉢で5リットル、10鉢で50リットル必要です(筆者の場合、毎年40Lくらいです)。肥料は元肥に有機肥料または緩効性化成肥料を使います。庭がほとんど無いお住まいの方は緩効性化成肥料をメインに油粕や米ぬかなどの少量パックの肥料がおすすめです。
お近くのホームセンターなどでピートモスを買ってきて植え替えの準備をします。ピートモスの産地はカナダ産(北米産)のものがブルーベリーにとって母国の土ということになりますので無難であるように思います。
筆者の場合、リン酸を多めに米ぬかと油粕を等量混ぜてバットグアノとバイオダルマを少々入れて元肥に使用しています。リン酸肥料の米ぬかとN:P:K=5:2:1の油粕、P=22のバットグアノ、N:P:K:石灰=2.5:5:4:20タキイのバイオダルマ(発酵鶏糞のようなもの)です。今回はコガネムシの幼虫に根を食害されたこともあり、根の成長を意識した組み合わせとしました。
バケツなどの大きな容器に乾いたピートモスに元肥を混合し水を入れて練り込み湿らせます。ピートモスは新鮮な物を使い購入から二年経過した物でも使用可能です。ピートモスや鹿沼土などを扱う場合はマスクをして耳まで覆える農業用の帽子を被りましょう。あらかじめ用土に散水しておくと粉塵を予防することができます。
この時ピートモスは乾燥して固まりになっていることもあるのでスコップまたは手でよくほぐしておきます。この時手首の無いゴム手袋を用いるよりも、炊事用の腕まで覆える手袋を使ったほうが汚れにくいです。植え替える量が多い時、靴はスリッパではなく長靴かガーデンシューズを履いた方が絶対良いです。
水でハスクチップを湿らせておきます。ウッドチップには針葉樹を粉砕したバークチップと、ココナッツの殻を壊したココナッツハスクチップとがありどちらもそれほど安いわけではありません。
根鉢を崩す
ブルーベリーの木を植木鉢から引き抜き3~5本爪のミニ熊手や鎌、園芸鋏などを用いて根鉢を少し崩します。このとき害虫が土の中にいないかよく調べます。もしもコガネムシの幼虫がいたら根洗いを行いすべての用土を取り除きます。根洗いする方法はバケツにたっぷりの水を入れてブルーベリーの根を漬けて用土を優しく落としていきます。用土が腐敗して匂う場合も根洗いを行います。
植木鉢からブルーベリーの株を引き抜き根を観察します。根張りが良いと上記の写真のように茶色い根が鉢の外周にびっしり覆われています。白い根は雑草の根なので取り除きます。外周部分は同じ植木鉢に植えなおす場合はひとまわり小さくほぐし、底の部分は厚くほぐして土を取っておきます。
植木鉢に植え直す
植木鉢よりも一回り小さくなった根を同じ植木鉢またはひとつ大きな植木鉢に植え替えます。ブルーベリーは浅根性なので下に大量の用土を敷き詰めたりして深く植える必要はありません。根の深さは30cmあれば十分です。根の深さよりも表面を覆うスペースに気を配った方が色々な理由からよいと思います。植木鉢の底に用土を7cmほど敷き詰め、その上にブルーベリーの根の塊を置きます。そして隙間ができないように土を詰めていきます。根洗いをした場合は片手でしっかりとブルーベリーの株元を保持して利き手で土を入れていきます。この時に水を掛けながら土を詰めていくと隙間なく土を詰めることができます。
植木鉢に対しひとまわり小さくブルーベリーの土をほぐして崩しておきます。根鉢を崩したブルーベリーの株をスリット鉢に入れて大きさを確かめてみました。ちょうどよい感じです。
表面も雑草と一緒に土を削ってありますのでピートモスで根を覆います。
ハスクチップでマルチング
表面にも肥料を薄く与えた後、表土をバークチップまたはココナッツハスクチップで覆います。土がたっぷり湿っていればこの後水をやる必要はありません。日当たりのよい場所に植木鉢を置いて、ブルーベリーの植え替えは終了です。あまりに植木鉢の数が多いと腰痛の原因となりますので5鉢程度までが体力のない人でも植え替えられる限度かと思います。
今回の植え替えに使用したのはスリランカ産のココナッツハスクチップです。根を保護するために表面をマルチングしました。ウッドチップは木材加工会社などから直接入手するともっと安価に手に入れることができます。ハスクチップで表面を覆い、用土にも少し混ぜるととブルーベリーの根張りがよくなります。ハスクチップを用土に混ぜるデメリットは蜘蛛やムカデやダンゴムシが隙間に住み着いたり(※本当にいました)、白アリに発見される可能性もゼロではないことです。
剪定方法(重要)
ブルーベリーの剪定は花の数を減らすための剪定と、古い枝や弱い枝、交差する枝、内側に向かう枝を取り除き形を整える整枝という剪定があります。
ブルーベリーの花芽調節のための剪定は冬の終わり頃に行います。枝の整理は収穫後の夏頃などに行います。剪定自体は年中可能なので慌てて行う必要はなく体調の良く余裕のある時で大丈夫です。
苗木を植え付けてから最初の3年間は剪定はほとんど不要ですべての花芽を摘み取るか、花芽のあるところを切り取ります。その後は混雑した枝や古くなったり病気で生産性の無くなった枝を刈り取るだけで十分です。枝を切ることで木が刺激を受けて春に強く芽吹きます。主軸枝といって地面から出ている太い枝は6年を過ぎると生産性が低くなってきますので7年目以降は株もとからノコギリで切ることもあります。主軸枝の生産性は新しい枝が生えてから2〜3年目がピークです。
剪定の目的
剪定は果実の品質を向上し、木の健康を保つために行います。
- 花芽を減らす
- 弱い枝を除く
- 古い枝を除く
- 中心部に向かっている内向枝や交差枝を除く
- 低い位置にある横拡がりの枝を除く
- 基部から出ている主軸を3-4本に減らす
ここからは筆者の経験と考察を含む剪定方法をご案内します。ブルーベリーの剪定は、枝が太い品種と細い品種では少し剪定方法が異なりますので気を付けましょう。市販のブルーベリーの栽培方法の本にはここまで詳しく書かれていませんが、ブルーベリーを観察してみると、枝の生え方が太い品種と細い品種があり、太い枝が生じやすい品種の剪定方法は細い枝が生じやすい品種に通用しないことがわかりました。このことについて理由まで詳しく説明しているのはこのページが初めてだと思います。※剪定直後に殺菌剤の塗布または散布を推奨します。(出典:2015-2016, 私。)
高血圧など持病がある人は医師の指導のもと十分温かくなってから剪定を行いましょう。無理に3月に剪定する必要はありません。剪定すること自体は年中可能です。
ハイブッシュブルーベリーの冬季剪定
ハイブッシュブルーベリーのほとんどの品種、そして太い枝が生じやすい品種の剪定方法について説明します。ハイブッシュの剪定の基本は花芽を減らし、細い枝や枝先の先細っているところ、病気で弱っている枝を取り除いて太くて元気な枝を残します。はじめは時間がかかると思いますがそれほど難しいことではないので慣れればこの剪定法は簡単です。
植え付け時~1年目の剪定
花芽をすべて摘み取るか切るなどして花芽のない状態にします。この際に、枝が細いからといってすべて切り落としてしまいますと発芽しないこともありますので注意します。特に専門店で購入した苗は剪定の必要性があまりありませんので強く切りすぎないようにしましょう。ハイブッシュブルーベリーは基本的に爪楊枝のような直径1.5mm程度の細い枝はすべて切り、直径2-3mm程度以上の枝は残す方向で、先細っているところは剪定します。ホームセンターで入手した病弱な苗は弱っているところを冬剪定で除きます。
2年目の剪定
基本的に1年目の剪定と同様にします。強剪定しすぎて弱らせないように注意しましょう。主軸枝は切ったところから枝分かれするので地際近くで切らないほうが安全です。なぜなら株もと付近で枝分かれが生じると新しい枝が横方向に伸びて低い位置に実がなり品質が悪くなるからです。味見用の枝の剪定の仕方は結果枝の剪定方法で説明しています。細い枝をすべて取り除いたら次の項目の結果枝の剪定方法に進みます。
2年苗から2年間育成したブルーベリーロブソンの冬季剪定の場所を記した写真です。味見をしたい欲望が控え目な剪定となりました。欲を捨ててガッツリ剪定したいところです。
3年目以降の剪定
ハイブッシュブルーベリーの剪定方法の見本です。以下の写真のように細かい枝を取り除いていき長くて太い枝を残します。切る場所を赤で図に示しました。切り口には殺菌剤入りの癒合剤を塗っておきます。細かい枝を取り除いたら次の結果枝の剪定方法の段階に進みます。
結果枝の剪定方法
結果枝については、本場アメリカの定番の剪定方法によると、6インチ(15.24cm)未満の短い枝や見るからに細い枝は付け根から取り除きます。だいたい2mm以上の太さの中果枝に1~2つ程度の花芽を残します。長くて太い長果枝(太さ3mm以上)の場合、先端の花芽は3~4個程度(アラパハのような超多収のラビットアイはその倍量程度)、タイタンのような極大粒の花芽は1~2つにして切り詰めます。枝の途中から基部方向にについている花芽は取り去ります。この剪定法はあくまでハイブッシュなど太い枝が出やすい品種の剪定の目安です。※2016年-2018年の個人研究に基づく。
昨年生えた主軸枝の剪定
1年目~3年目の剪定と同様に行います。株元から生えた新しい主軸枝についての考え方は下図が参考になると思います。ブルーベリーの剪定は、主軸枝の剪定と結果枝の剪定の二つに分けて考えます。もちろん自然樹形を楽しむためにこのような剪定方法にする必要はありません。
古くなった主軸枝の剪定
古くなった主軸枝は切り返し剪定を行います。5年以上の枝で老化が見られ生産が乏しくなったら地際からノコギリを使って切り取り処分します。地際から生えた弱いシュートは基部から取り除きます。ハイブッシュ系の細い枝は冬季剪定できれいに除きます。主軸枝(=超太い幹)に付いた蕾も取ります。花芽を付けすぎて木を弱らせないように樹勢をコントロールします。花芽を多く残しすぎると、小粒で品質が悪い実が多くできるほか、新しい枝が生えずに木が枯れこむ可能性があります。
ブルーベリーの古い枝を基部から切るにはロッパーという道具を使います。
樹高を抑える仕立て方(中級向け・樹勢旺盛な直立性限定)
ここでは中級者向けに鉢栽培で樹高を抑えて作るハイブッシュブルーベリーの仕立て方についての私の自前の方法をご説明したいと思います。既にベテランのみなさまも実践しておられるでしょうが一応言葉で説明してみます。以下の写真をご覧ください。ブルーベリーの枝の成り立ちは1年目に主軸枝(樹木でいう主幹)が伸びています。太い主軸枝を摘心または冬季剪定で強く切ってしまい、2年目に主枝のような分岐枝を出させます(購入時は2年苗ですからこの段階です)。3年目に亜主枝のような分岐枝を出させてその冬に亜主枝のような分岐枝を剪定して4年目に結果枝のような分岐枝(結果枝)を発生させ5年生の主軸枝から生じた結果枝から収穫を開始します。枝を切る時期や化学肥料によってこの期間は短縮可能です。理屈は単純で他の果樹とまったく同じ木の構造にすることです。この仕立て方の欠点は混みやすいことと樹形がコントロールされているため収量が少なくなることです。根域制限を行っているからできる方法といえましょう。(2016.12.23考案)
枝の太さや長さが揃うので粒揃いはよくなったものの、正直いって非効率だと思います。
この剪定方法には適するタイプと不適なタイプとがあり、ブリジッタやミスティ等直立性で樹勢が強い品種は結果枝への影響が出にくいです。不向きなタイプは開張性の品種で樹勢は中以下のスージーブルーでは弱い枝が出やすくなりました。樹勢の弱いタイプは枝分かれの位置を高くして分岐回数を減らす必要があると試してみて思いました。
※この方法は地植えやコンテナの方には意味のないやり方です。ついでに説明しますと鉢の外側に来る枝は低く仕立てられたものの、中央に来る枝は配置を高くせざるを得ませんでした。
カタログ写真のような剪定方法
ここでは、より大粒で高品質な実を得るための剪定方法を紹介します。この方法はノースカロライナ州の剪定方法をベースにより詳しく説明しています。断面の直径が1mm程度の枝は剪定により除去することは当然ですが、それだけでは良質な果実を得るには不十分です。ブルーベリーの長果枝は、主軸枝(Cane)から分岐した枝(一般的な言葉を使うなら亜主枝、英語ではBranch)から直接生えてきます。長果枝を強く剪定すると枝先から中果枝が生じます。中果枝から先には細い枝しか生えません。このことを覚えておくと、剪定が楽になります。ブルーベリーの房なりは根域が広く樹勢が旺盛なほど可能といえます。
残す結果枝
今回の剪定で目標とする枝は、太さが3mm程度以上ある枝です。写真は長果枝の翌年の状態を示しています。この3mm以上ある太い枝に付いている花芽は房なり可能ですので残せる花芽の数も多く取れます。カタログのような鈴なりの果実を実現するには長果枝に結実させます。この長果枝は地上から1m程度の部位、つまり亜主軸枝がカーブしている場所から生じやすいです。
この枝は大粒で高品質な実がたくさん実り、この枝から翌年の中果枝以上の良い結果枝は出ていません。小さい鉢植えの場合や、ハイブッシュ、極大粒品種の場合、この枝より先から来年の高品質な結実が期待できないので結実している辺りで切り戻します。地植えのラビットアイで加工用に収穫量を優先する場合は無剪定でそのままにしておきます。この剪定方法の違いがハイブッシュと一部ラビットアイにおける収穫量の差が2倍になる理由です。要するに豊産性のラビットアイは小枝でもコンスタントに結実可能という特徴があります。
この写真は長果枝の先から新しい中果枝が発生しています。翌年に、中果枝に結実します。その後の冬に枝を太さ3mm程度あるところまで切り戻すと再び中果枝が生えて来ます。
除去する枝
それに対し、以下のような枝は果実品質が悪い(実が小さい)ので剪定で除去します。この手の枝は冬まで残しておく必要がないので生育期に除去します。
このような枝はよい結実が得られないので生育期または冬の終わり頃の剪定で除去します。もしも春夏に見かけたら慎重に取り除きます(新梢が無い状態で無理に切ると枯れの原因になりますのである程度残す必要もあります)。このような枝が成長期に残っていると新梢の発生が悪くなります。もしかしたら小粒の品種ならばこのような枝でも残しておいてもよいのかもしれませんが、いずれにせよ新梢の出が悪くなるので取り除いたほうがよいでしょう。
この枝は葉も茂り一見元気そうに見えますが、来春のよい結実が期待できません。この枝から質の良い新梢が発生することはありません。枝ごと剪定しておきます。
太さ2mm未満の枝の剪定の判断基準について
ブルーベリーの剪定で時々迷うときがあります。そんな時は大抵切るべき枝に花芽が付いているから惜しいから残したいというバイアスが絡んでいます。先ほど「取り除くべき枝」で説明したように、花芽が太さ1mm程度の枝に付いていても大粒果や高品質な実は期待できません(一部の豊産性のラビットアイ以外は)。仮にラビットアイであってもそうした枝が多いと新梢の発生が悪くなります。こうした微妙な枝をどうするかについて断定したことは言えませんが、少なくともここで述べたようなよくない結果に繋がることはあると思います。また高品質を目指すと必然的に収穫量の総重量が減ってしまいます。量を取るか、品質をとるか、栽培の目標をどこに置くかによっても剪定方法は変わります。
こうした枝を取り除いていった場合、ブルーベリーの剪定は夏の収穫後剪定が冬の終わり頃の剪定量より多くなることがあります。
長果枝利用のサイクルは次のようになると思います。長果枝を頻繁に出すには地植えするしかないと思います。10号の鉢植えで毎年長果枝を何本も出すことは無理です。植木鉢の栽培では強剪定をしても長果枝が出ることなく枯れることもありますので、中果枝への着果が主になります。
- ハイブッシュの場合:長果枝に結実(1年目)→剪定→昨年の長果枝から中果枝の発生(2年目)→中果枝に結実(3年目)→切り返し剪定→中果枝発生(4年目)→中果枝に結実(5年目)・・・主軸枝を処分(6-7年目)。
- ラビットアイの場合:長果枝に結実(1年目)→無(弱)剪定→昨年の長果枝から小中果枝の発生(2年目)→小中果枝に結実(3年目)・亜主軸枝の別の場所から長果枝の発生→長果物枝に結実(4年目)→小中果枝に結実(5年目)・・・主軸枝を処分(6-7年目)。
6月前半に収穫を終える早生品種ならば収穫直後に結実した長果枝を剪定することにより中果枝が発生し翌年結実することも可能かもしれません。
ラビットアイや一部弱い苗木の冬季剪定
ラビットアイは長い枝の先端、1結果枝に5〜7房の果実が実り、さらに枝分かれした小さな小枝にも2〜3房実るのでハイブッシュと比べて豊産です。この実り方の特徴が剪定と関係ありますので覚えておきましょう。
たいていのラビットアイの品種、あるいは細い枝が生じやすいブルーベリーの冬の剪定について説明します。ラビットアイの剪定はハイブッシュと比べると少し大雑把で小枝の量が多いので作業量も多くなります。
ブライトウェルやパウダーブルーのようなラビットアイ品種や一部の細い枝がよく伸びるタイプのハイブッシュブルーベリーはハイブッシュ系のブルーベリーと比べると異なる生長の仕方や実り方をします。ラビットアイ系品種は細長い枝が出やすいですが、細いからといって遠慮なく切ってしまうと若木のうちは樹勢が悪くなってしまいます。これは私の個人的な考えですが、ラビットアイ品種(や細い枝が長く伸びる品種)は若木のうちは細い枝であっても切らないほうがよいと思います。大関ナーセリーもラビットアイの剪定は不要だと述べています。若木の頃に切りすぎると大きくなり難くなる場合もあるので気を付けましょう。基本的にラビットアイや細枝が出るタイプのハイブッシュの剪定は樹形を低くするための摘心や切り返し剪定や混雑解消のための透かし剪定、あるいは低い位置の枝の除去程度でよいと思います。内向きの枝や5cm未満の手で摘まんでも取れそうな病斑がありカクカクで見るからに病弱な枝は取り除いてください。※2016年前半の個人研究に基づく。(出典:2015-2016年, 私。)
一部品種の剪定ではハイブッシュの剪定では切り落としてしまう枝も残します。
一部ラビットアイや細い枝がよく伸びるタイプの品種の花芽の処理について
ラビットアイの一部品種や、ハイブッシュベリーで細い枝がよく伸びるタイプのブルーベリーの花芽の冬季の減らし方について、普通のハイブッシュブルーベリーと同様に花芽の処理を行えばその品種の特性によりいっこうに果実にありつけないことがあります。そういった品種の場合は異なる花芽の減らし方を行います。(タイタンのような大粒系はハイブッシュと同様に行う必要があると思います。)品種や健康状態によっては長果枝と、細くて短い短果枝(マッチ棒みたいな枝)に多く花芽を付ける傾向があり、中果枝が出にくい傾向があります。しかしすべての短果枝に花芽を残しておくと、幼木のうちは新梢が出にくくなるデメリットがあります。本来は剪定により除去すべき良くない枝も状況によっては残す必要があります。ラビットアイの花芽は1つの長果枝に最大で7〜8房になる程度残すことが可能です(ハイブッシュはその半量が目安です)。長果枝の花芽の残し方については後述する小沼氏の考え方がたいへん参考になると思います。これといって正解はまだ私もよくわかっていませんが、太い枝ほど残せる花芽の数は多いです。また、いつまでも細枝を生らせておくとその木が本来有するよい枝が出にくくなりますので折を見て除去します。なぜこのよな悪い枝が出るのかわかりませんが、おそらく病気(Stem canker等)によるものではないかと私は思います。※個人研究に基づく。(出典:2015-2018年, 私。)
房(cluster=クラスター)について
ブルーベリーは品種の特徴や枝の状態によって果実の付き方が異なります。ひとまとまりになっている果実の塊のことを房(cluster)と呼びます。ある時は1房あたり5粒くらいしか実をつけませんでした。それは結果枝が細くて10cm未満の短い枝でした。別の充実した房は1房あたり13個も果実をつけました。結果枝に3個花芽を残した大粒品種は1房あたり6個〜8個程度しか実をつけませんでした。1房に12個実を付けたある品種はカタログよりも小粒となってしまいました。房の状態は結果枝の太さに関係があります。よい房を育てるには太くて新しい結果枝を大事にします。
ブルーベリーの摘心を詳しく解説!
ブルーベリーの摘心について、最初にお断りしておきますが、私はフクベリーの育種者である福田 俊氏のご著書「ブルーベリーの観察と育て方」から学んだ内容を少々発展させています。はじめてブルーベリーの育成方法を学ばせていただきました福田 俊氏にはここでお礼申し上げます。確か氏の本にはなぜ摘心するかについて真の目的について理由は述べておられなかった気がしましたので(恥ずかしながら、ご著書は1度読んだきりで手元にありません)、摘心のタイミングと結果について分析し技法の体系化を試みるとになりました。(出典:「ブルーベリーの観察と育て方」、2016年,11月, 私。」)
その年に勢いよく伸びた太い緑枝の摘心を行うと枝分かれ、中果枝や亜主枝の出現が期待できます。ブルーベリーの摘心がうまくいくと良い枝が2本出て葉の枚数が増え樹高を抑えられるというメリットがあります。ブルーベリーの摘心はタイミングに気を付けます。特に夏季以降に摘心をすると翌年の花芽はできない可能性があります。8月の猛暑日に新梢が展開しないように気を付けるか、夏季は寒冷紗で直射日光を遮り水を切らさないようにします。失敗すると茶色く黒焦げたように干からびたり、結実にふさわしくない細い枝が分岐します。失敗の可能性もありますので摘心は樹勢の強さを見て余裕をもって試みましょう。ブルーベリーの摘心のメリットは、果実サイズをコントロールしやすいところにあると思います。ブルーベリーの摘心で一番気を付けなければいけないポイントは、切り口に殺菌剤を必ず塗っておくことです。ブルーベリーの摘心のタイミングはちょうと雨の多い時期に当たりますので、切り口から細菌が侵入する可能性が高いです。
積極的に摘心して枝分かれを観察することも面白いですが、摘心せずありのままの樹形を見ることもまた趣があってよいと思います。
※地植えでブルーベリーの木を大きくしたい場合や長果枝を多く出したい場合は摘心不要です。
悪く言えば、車枝になったともいえますがよく言えば結果枝が出たとも言えます。勝ち枝、負け枝がでてますのですぐに2本に減らしました。このとき学んだことは、摘心した箇所から出た分岐枝は2本残して他の芽は欠きとったほうが負け枝の生育への負担が軽減できることです。
摘心してよい場合は限られていますので、むやみやたらとしないように気を付けましょう。無計画な摘心は収穫量の低下や細枝の出現に繋がり後で基部から切り返さなくてはならなくなります。摘心の基本は枝と枝がかぶらない位置で行います。この方法はあくまで木を弱らせずに中果枝を多く作り、花芽を1結果枝に1~2個残すための方法ですので、大きなコンテナで育てる場合や地植えで栽培スペースに余裕のある場合の摘心は逆に混雑や衰弱の原因となり、長果枝にたくさん果実をならせることがお好きな方も無視してください。私個人としては枝や果実品質に悪影響が出るおそれがあるので摘心はあまりおすすめしていません。
摘芯のタイミングに失敗するとどうなるの?
ブルーベリーの摘芯のタイミングに失敗すると、枝が枯れたり弱い枝が出たりします。また花芽分化期以降(8月~)と直前(7月中下旬~)の摘心は花芽がなくなる場合がありますので翌年その枝に花を咲かせたい場合は気を付けましょう。摘心が有効なのは1年目の春に太く長く伸びた主軸枝(基部から出た新しい枝)のような太くて強い緑枝です。細い枝を摘心しても細い枝しか生じませんのでご注意ください。(出典:2015年,私。)
夏季剪定(共通)
樹幹内部を風通し良くし主要な枝に光を当て病害虫による害を予防するために収穫後に剪定を行います。枝葉が込み合いますと、影になった葉は光合成ができなくなり枯れたり、昆虫の住み処となり果実が汚れたり、果実に傷がつき品質が低下しますので、そのような枝は剪定します。樹形を作りたいときは、摘心や誘引を行いますが、やりすぎると調子を崩すこともありますので気を付けましょう。果実をつけて疲れたような枝も切っておきましょう。
趣味栽培の場合、無理に夏の剪定を行わなくても大丈夫ですが、やっておいたほうが害虫の隠れる所を減らしたり木に刺激を与えられるので良いと思います。夏にしておいたほうが人間の脳の血管への負担を軽減できるメリットがあります。特に高血圧の人は温かい時期に剪定を済ませて置いたほうが無難です。
6月の初旬に収穫を終えるサザンハイブッシュの早生品種は時期的に収穫後の剪定が行いやすいです。込み合った枝や収穫を終えた枝を切ることで木の内部の風通しをよくして健康的に育てられます。
剪定は内側を向いていたり、交差していたり、低すぎる位置に生じている枝を剪定鋏を使って切り取ります。鋏を閉じた瞬間に切り口が割れることもありますのでなるべく切り口が割れたり出っ張らないようなよい鋏を使いましょう。冬には気づかなかった太い枝を切ることもあります。新梢が出にくい時は思い切って大胆に切ることも大事です。茎枯病(Stem Blight)が生じた枝は内部の道管が細菌に冒されていますので8月までには付け根から切ったほうが無難です(敏感な品種は放置すると拡がります)。
秋季剪定(共通)
ラビットアイにおいて秋剪定(8月下旬-9月上旬)を行うことによりその年の新梢に葉芽が増え微々たる変化が生じたという日本の研究結果が出ています。
8月末から9月上旬に剪定することを前提として、気になった枝を摘心し枝分かれを期待する剪定を行うことができます(出典:2011, 「ブルーベリーの観察と育て方」)が、千葉県の南部や静岡県の太平洋側などの温暖な地域以外の場所や耐寒性の低い品種はうまくいかないかもしれません(出典, 2014-2016, 私)。摘心が収量アップにつながるかどうかについての確かなことはいえませんが、枝の分岐がかえって込み合う場合もありますので、秋季の摘心は苗木の状態を見ながら行います。先ほども書きましたように、これはあくまで苗木の形を整えるための剪定であり、翌々年から実らせるための方法である(翌年は結実させない剪定方法である)ことに注意しましょう。切り口から病原菌が入り込みますので、殺菌剤を使えない場合はむやみやたらと秋に剪定しないほうがよいでしょう。
ブルーベリーの秋季剪定は基本的に不要です。
ブルーベリーの仕立て方
これまでご説明してきたことを総合するとブルーベリーの仕立て方は上記のタイプに分けられます。左から低樹高仕立て(私が勝手に命名)、中央は自然樹形、右は半樹高仕立て(私が勝手に命名)となります。半樹高仕立てというのは文字通り自然形の木を半分に切り樹高を半分に抑える仕立て方でブルーベリーを腰の高さで収穫してまぶしい空を見上げたくない場合あるいは車椅子に乗った状態で収穫を楽しむ場合に適しています。ひとつ注意点を挙げるとすると、低樹高仕立ては病気の感染という観点からはあまり推奨できるものではありません。地際に近い横拡がりの枝は取り除いておいたほうが無難です。
自然形に仕立てると2メートルほどに伸びた主軸枝の先1メートルほどに果実が集中しますので身長が低い小学生のお子様は収穫しづらいと思います。半樹高仕立ては枝が地面に向かって枝垂れやすく地面に近い部分は虫害を受けやすい、腰を屈めての収穫というデメリットがありますので地植えよりも大型プランターでの栽培が適しています。直径30cm径までの鉢植えは扱いが容易で多品種を楽しみやすい反面、収穫量が少ないです。
品種に合った剪定は実際に栽培してみないとわからないこともあります。強く剪定しないほうが大きな果実をつける種類と、強く剪定したほうが大きな果実をつける種類、さまざまです。
摘蕾の目安(重要)
自然状態のブルーベリーは果実を実らせすぎて弱って枯れてしまうという特徴があります。ブルーベリーを枯らさないためにも蕾の数を減らして調整します。蕾1個に対し約10粒の果実が実ります。植えつけ1~2年目までは、すべての蕾を指でポロっと落としたり、蕾ごと枝を切り詰めるなどして蕾を取り除きます。3年目もあまり実をつけさせずに1枝に1~3芽くらい残すことを目安に摘蕾または弱剪定します。成木になりましたら残す花芽の数は枝ぶりを見て決めます(大事に育てていると、わかるようになってきます)。元気のよい枝の先端に果実を実らせると考えればわかりやすいかもしれません。元気のない枝は、枝の途中に花芽がいくつもできたり、細い枝先に花芽が出たりします。仮に枝先に4つ花芽があって枝先が細くなっていたとしたら、太いところについている花芽を残して先端を少し剪定します。
ある農家の栽培方法では、花芽1に対し葉芽4の割合が最も粒が肥大しやすいとのことです(NHKで群馬県の小沼さんという方の特集で2016年7月10日に放送してました)。葉芽の数が多すぎると逆に粒が肥大しにくいというそうです。この話に興味が沸きましたのでブルーベリーの葉についてよい結果枝の写真を撮り検証してみました。ブルーベリーの葉芽と葉芽の間隔はおよそ2.5cmありました。葉芽4個分でおよそ10cm、それに分岐点から最初の葉芽までの長さ2.5cmと最後の葉芽から蕾までの距離2.5cmを足しますと、およそ15cmとなり、この小沼さんの考え方は結果枝の6インチ剪定の法則である15.24cmと近い長さとなりました。ということは、粒の大きな品種(大粒~特大)は6インチの結果枝に対し、花芽1つにしてこれより先の枝は切ったほうがよさそうですね。中粒なら1結果枝に2個くらいの花芽ということになるでしょうか。ただしラビットアイではこのような枝ぶりになるとは限りません。この剪定の法則は大きな果実のオニールやブリジッタ、チャンドラーやタイタンなどに適しているように思います。(出典:2016, 1:4の箇所は小沼氏, 残りは私。NHKもかな?)
上記の考え方を参考にすると、ブルーレカのような中粒の品種は葉芽2に対し花芽1でもよいと考えられ、10cmの結果枝に1つの花芽という剪定の仕方も可能ではないかと思います。ミスティやブライトウェルのような中より少し大きめのサイズでも葉芽3くらいに対し花芽1と仮定すると12.5cmくらいの枝に花芽1の剪定も大丈夫であるような気がします。
- 特大粒の品種・・・太さ2mm以上の枝、約15cmに対し花芽1個または葉芽4に対し花芽1個 4:1 約15cmに対し花芽1~2個。
- 大粒の品種・・・太さ2mm以上の枝、約12.5cmに対し花芽1個または葉芽3に対し花芽1個 3:1 約15cmに対し花芽2~3個。
- 中粒の品種・・・太さ1.5mm以上の枝、約10cmに対し花芽1個または葉芽2に対し花芽1個 2:1。約15cmに対し花芽3~4個。
- 例外の品種・・・太さ1mm径の枝でも花芽1に葉芽1~2の比率でよく実る品種もある。
- 太さ3mm以上の長果枝・・・生産量1樹5ポンド程度の品種(主にハイブッシュ)で3~4芽、10ポンド近い品種(一部豊産のラビットアイ)で1枝に7~8芽程度残せる。
理屈でいえばこうなりますが、時にはもっと長い枝に花芽がついていたり短い枝がほとんどの場合は戸惑うこともあるでしょう。結果枝が弱いな、と思ったら花芽1個にして収穫後はその枝は不要になりますので初夏に剪定してもよいでしょう。すべてがこの法則に当てはまるわけではないのでこればかりは実際に試してみないとわかりません。大粒と中粒についてはあくまで私が作った仮説にすぎません。※個人の見解です。
葉芽と蕾の比率の計算方法
高品質な果実を得るためには葉芽と蕾の比率も観察して計算します。この観察は収穫時期に行います。1枝にある良好な房の数に対し葉芽から出ている枝の本数を数えて集計します。筆者が観察した結果は次の通りです。
蕾の数 | 葉芽の数 | 枝の長さ・太さ・房の付き方 | |
ブライトウェル | 1 | 2 | 最短10cm程度、1mm径、2房程度の条件で大粒が実るが熟期揃わず新梢発生少ない。太い枝ほど熟期早く粒揃いが極めて良い。よって1:1は不適と思われるので1:2を試したい。中程度の枝では2:2の房もあった。自然状態では1:1や2:2になる傾向。 |
コロンブス | 1 | 4 | 最短20cm程度、1.5mm径、1房程度で特大粒が実り木も健康。大粒品種なので今後も1:4を基本としたい。1mm径の極細枝への結果は見送りたい。 |
スージーブルー | 1 | 4 | 1mm径の枝への実りは品質悪い。1.5mm枝でも微妙。結果枝であっても衰弱枝は除去すべき。この品種はダメだこの環境には合わない。もうやめたい。 |
皆さんも房と葉がどんな比率になっているか観察してみましょう。
病害虫
ブルーベリーを好む生き物は多くいます。ヒヨドリなどの野鳥はブルーベリーが大好きです。野鳥に狙われる場合は収穫期に防鳥ネットを張ります。収穫期になると、葉の裏に(みなさんの大嫌いな)イラガが発生しますので、刺されないように注意します。直接イラガに刺されなくても毒毛針が手に刺さることがありますので、ピンセットで毒毛針を抜いて傷口を水で洗います(30歳代くらいなら患部を明るくして目を凝らせば何とか針が見えますので針が見えない方はお子様に抜いてもらってもよいでしょう)。毒毛針が取れると強烈な痛みがなくなります。品種によってはコガネムシに葉が食害され、根も幼虫に食われますので、鉢植えの場合はブルーベリーに付いているコガネムシを捕まえるか目の細かい防虫ネットを張ったほうがよいかもしれません。コガネムシは見つけ次第捕まえて、やっつけるなり遠くに逃がすなりして処理します。植木鉢(プランター)に防虫カバーをかける場合は地際からの新しい主軸枝の伸長を妨げないように気を付けましょう。果実にミバエが入り込むこともあり、増えるとたいへんな被害をもたらすので見つけ次第除きましょう。落ちた果実にはコバエやアリなどが寄ってきますので、落ちた実もなるべく掃除しておきましょう。カメムシは来ないと思っていましたが冬に見たらブルーベリーの株元でひっくり返って休眠していましたのでいるかもしれません。ブルーベリーは皮ごと生食しますので、健康への影響を考えて開花から収穫までの農薬の使用はできる限り避けましょう。(出典:2013-2016, 私の庭での経験・・・)
私が3年ほどいろいろためして試行錯誤した結果、最も手軽なコガネムシ対策は100円ショップで売られている回収ネットや防風ネット、防虫ネットを使用する方法でした。しかしこのネットを植木鉢に履かせますと地際から新しく芽吹いた主軸枝(英語でステム、薔薇で言うベーサルシュート)が網の中で曲がってしまうので、この網で覆う方法は完璧とはいえず、中にコガネムシの幼虫が入ることもありました。
冬の害虫
私の園地で発見したブルーベリーの越冬害虫の写真を掲載しました。苦手な方はスルーしてください。まずはイラガの害虫からご説明します。
イラガ
イラガは緑色をしていて毒毛針を持っている害虫でベリーを収穫する際に手に触れたりベリーに毛針が付くとたいへんですので以下のような茶色と白のマーブル模様の卵のようなものを見つけたらすぐに剪定鋏で切り取り捕殺します。人体への危険度の高い害虫です。
ミノムシ
次の以下の写真はミノムシという害虫で具体的な生物の名前は成虫を見るまでわかりません。このミノムシも春になるとブルーベリーの葉を食べたりしますので見つけ次第摘み取ります。あまり深刻な害はありません。
春夏秋の害虫
4月下旬あたりになるとブルーベリーにアブラムシなどの害虫が付くことがあります。イラガは葉の裏に複数密集します。ミノムシは葉を害します。害虫は見つけ次第補殺します。
アブラムシ
アブラムシは日陰で目立たない場所に発生しやすいです。汁を吸って排泄物で茎や果実を汚します。大きな害はありませんが発生初期に取り除いたほうがよいと思います。
アブラムシに牛乳100%にアンモニア水数滴を混ぜた溶液をスプレーしました。数匹いたのが一匹まで減りました。アブラムシをすべてなくすことはできませんでした。理屈としては液体と一緒にアブラムシを乾燥させて殺虫効果を狙いますので乾くと膜が張る素材なら何でも使えると思います。
イセリアカイガラムシ
私の庭で柑橘類の苗木を減らしたため今年になりブルーベリーに移動して大繁殖をしている害虫です。木の枝や葉の裏に取り付いて吸汁し木を弱らせます。冬季に徹底して駆除します。カイガラムシについては薬剤散布もやむを得ないと考えています。イセリアカイガラムシは寄生先の植物に適応する力があり、それまで寄生したことのなかった樹木に寄生するとその植物のみに集中する適応能力が非常に強いように思えます。外来生物であり天敵もいませんので一匹たりとも生存を許してはならない害虫です。
コガネムシ
かわいい顔をしていますがコガネムシの一種だと思います。ブルーベリーの葉を食害しています。捕まえようとするとポトッと落ちて逃げます。どうやらコガネムシの特技は「死んだふり」らしく、幼虫の時から死んだふりの演技をしています。
コガネムシの幼虫
一番厄介な害虫です。ブルーベリーの細根をほとんど食べつくしてしまいます。1鉢あたりに10匹以上いる場合もあります。コガネムシの幼虫を見つけた時は根洗いをして害虫を取り除きます。コガネムシの幼虫が出た鉢土は総入れ替えしますが、費用が気になる場合は昨年の土を使ってもよいでしょう。
謎の虫
昆虫により皮の部分に食害を受けました。
ブルーベリー栽培で私としては一番不快に思う害虫です。
ブルーベリーの実の中にも害虫がいる場合があります。虫害を受けた果実はたいへん柔らかいという特徴があります。柔らかい実はあたかも完熟のように思いがちですが、虫害を受けた果実は一部分だけが柔らかい、あるいは全体的にすぼっているなどの特徴があります。気持ち悪くてあまり知りたくない事実ですね。もしもこういった害虫が嫌なら登録農薬を使うことや、冷凍・加熱して加工しましょう。できる対策として、雨の日の前に完熟前に収穫すること、落果した果実を清掃することや、収穫後に残った未熟な小さな果実をしっかり摘み取り袋に入れてごみの日に出しましょう。
幹(茎)の病気について
以下の病気については本場、アメリカの研究論文から適当に翻訳し、誰にでもわかるように執筆いたしました。まだ日本ではブルーベリーが病気に罹っていても無視されているようなので、ブルーベリーは高い確率でほぼ病気になる事実を知ってもらいたいと思います。Stem Canker
ブルーベリーは枝が細菌に感染しやすく、ラビットアイではStem Canker(ステム・キャンカー、訳すと枝枯れ病(胴枯れ病・茎枯れ病)またはPhomopsis cankerとFusicoccum canker, Godoronia canker, B. dothidea cankerと原因菌によって分類される)他にはtwig cankerやcane cankerなどとも言われ、深い 亀裂が生じて枝枯れ、枯死の原因となります。日本では単に疫病と一括りに言ってしまう人もいます。ステムキャンカーの症状は1~3年目の枝に発生します。この病気にかかるとブルーベリーの木は荒廃していきます。感染した果実は柔らかくなり裂けることがあります。ステムキャンカーは幹に斑点がポチポチとできており中心部が枯れて次第に感染が広がっていきます。ステムキャンカーに対応した登録農薬はありませんので、感染した枝は治癒しません。根絶するには苗木を処分するしか方法はありません。Stem Caankerについては薬剤も効果がないといわれてます。できれば栽培のはじめから未感染の苗木を入手して病気のないエリアで苗木を育てることがベストです。清潔な剪定ばさみで1株ごとに鋏を消毒し切り口に殺菌剤を塗ることができれば病気の拡大を遅らせることができるかもしれませんがこの病気は雨のしぶきによって感染しますので根本的な対策にはなりません。対処としては、木とその周辺を清潔に保ち、冬季にこの菌が越冬している枯れ枝と感染枝を除去し焼却すること、この細菌の宿り木となりやすいオニールとケープフェアを栽培しないという方法もあります(筆者の見解ではブライトウェルも含まれ、確かにオニールも感染しています)。切り口に防水性のある癒合剤や木工ボンドでシーリングすることも対策として考えられます。抵抗性品種としては、ブルージェイ、ジャージー、ブルエッタ、ダローがありますが感染したまま発病しないというだけのことですので解決にはなりません。しかも休眠期の殺菌剤の散布に効果は薄く、結実直前や、特に結実中に多少効果はあるとのことです(フロリダの気象条件では)。この病気に感染した株は弱り収穫量が落ちます。Fusicoccumが活発になるのは10度から22度(春と秋)、Phomopsisが活発になるのは21度から26度(春夏秋)でアメリカでは機械収穫で感染しやすい状況になっているようです。Phomopsisは雑草や草花や野菜、オリーブや桃リンゴ、ナシ、バラ科の果樹のような樹木でも傷口から感染します。
ステムキャンカー(茎枯れ病)は原因枝を除去し殺菌剤を散布するだけでは解決になりません。近くにステムキャンカーに罹患しやすいバラなど他の植木を育てていればこの病気を抑えることはできないでしょう。
ステムキャンカーの病原菌のサイクルは冬の終わりから早春に菌糸体を増やします。胞子は雨や水やりの水で飛び散って感染を拡げます。感染して数日〜二週間ほどで内部に実子体を形成します。菌は生育可能なうちはどんどん成長します。
ステム・キャンカーの特徴・・・円形の病変、黒の斑点や赤の波紋と枯れると患部がやや膨張してひび割れ厚みが見られ、えぐれることがあります。
Stem Blight
ステムブライト(Stem Blight)はCankerと似ていますが、症状がまったく異なりCankerよりも重症です。ステムブライトは日本語に訳すと茎枯病といえますが、症状を見た限り茎枯病と同じ意味を持たないと思います。見た目の症状としては枝先から茶色くなり枯れこんでいきます。Stem Blightが生じた茎の断面は内部が細菌に冒されています。対処法は腐れのない場所まで茎を切ります。このとき清潔な剪定鋏を使わないと無病の箇所に細菌が付着する可能性があります。Stem Cankerは雨水から幹や葉の表面に直接感染し主に2年~3年枝に発生するのに対し、Stem Blightは新梢から枝の内部に感染します(筆者の観察結果に基づく)。おそらく梅雨の時期に若葉の先端付近の傷口からアブラムシなどの吸汁性昆虫か何らかの原因で感染したものと思います。Stem Blightが生じた枝は新梢でも茎が茶色く変色していない基部まで切り(たいていは基部付近まで冒されています)、切り口には殺菌剤を塗っておきましょう。早めに対処をしないと木そのものが枯れてしまいます。葉の褐変も症状のひとつで葉の外側から枯れてきます。
ブルーベリー茎枯病の症状は葉にも見られます。外見は健康に見えても内部は細菌に食されています。
根腐れ(root rot)
根腐れは、根腐れ菌により引き起こされます。排水をよくする必要があります。耐病性のある品種もあります。
根頭がんしゅ病については、苗木と用土、植木鉢すべてを処分したほうがよいと思います。
疫病菌(Phytophthora)についても2016年時点で登録農薬がありませんが、根腐れ(Phytophthora由来含む)用の登録農薬はあります。
斑点病(Leaf Spot、真菌)については登録農薬があります。
ウイルス病(BISV, Blueberry Scorch Virus)・・・1980年ごろからアメリカで認められたブルーベリーの花や枝を枯らせるウイルスです。枝や株の死亡率も高く収量へのダメージがあります。クランベリーは感染しても無症状です。日本でも発生しているかどうかはわかりませんが、このウイルスに感染した株は処分しなければいけません。花ごと枝が枯れるほか、葉の葉脈に沿って葉に侵入して痛んで赤茶色に染まったり葉が黄色く変色するなどの症状が認められ感染しても無症状のままウイルスを保持する品種もあります。媒介主のアブラムシの密度を低くするなどの対策が考えられます。いったん感染するとウイルスはなくなりませんので、苗木を処分します
Ringspot Virus・・・真菌性のLeaf Spotと似ていますがウイルスが原因の病気です。いくつかウイルスの種類によって症状が異なります。葉が奇形になったり赤く染まったり斑点が生じて植物が緩やかに弱っていき枝や株が枯れることもあります。感染枝の除去や(植え付け前に)雑草や線虫の除去を行います。詳しくはミシガン州立大学のリーフレット「Virus and Viruslike Diseases of Blueberries(http://msue.anr.msu.edu/uploads/files/e3048.pdf)」に書かれています。
マミーベリー(Mummy berry)・・・ブルーベリーの果実がミイラのように萎縮する病気です。
モザイク病・・・アブラムシなどを介してモザイクウイルスに感染することで発症します。葉が黄色などのモザイク様になることが特徴です。
さび病・・・葉に赤茶色の点々が生じます。さび病に弱い品種があります。
出典:「Virus and Viruslike Diseases of Blueberries(http://msue.anr.msu.edu/uploads/files/e3048.pdf)」
細菌病に関しては、できるだけ風通しをよくする、雨を当てないようにとしか言いようがありません。ブルーベリーはアメリカでは残留農薬の多い果樹のひとつであり、病気とは無縁ではありません。ためしたことはありませんが、別の細菌(EM菌や植物性乳酸菌など)で菌を制するという方法も考えられます。
なるべくすべての切り口、傷口に殺菌剤入り癒合剤を使うことも対策のひとつといえるかもしれません。
農薬について
いくつかブルーベリーに使える農薬を紹介したいと思います。ブルーベリーの登録農薬は100種類ほどあります。(出典:ルーラル電子図書館での検索結果)
インプレッション水和剤 ・・・インプレッション水和剤は納豆菌の1種であるバチルス・ズブチリスを有効成分とする微生物殺菌剤です。ブルーベリーの斑点病に適用されています。
セレナーデ水和剤・・・バチルス ズブチリスQST713株の生芽胞…5x109CFU/gです。ブルーベリーの斑点病に適用されています。発病前から発病初期までの使用に限られます。2016年7月1日発売。
オキシラン水和剤 ・・・有機銅水和剤です。キャプタン…20.0%、8-ヒドロキシキノリン銅…30.0%。ブルーベリーの斑点病に適用されています。収穫後から落葉期までの使用に限られます。
ストロビードライフロアブル ・・・ブルーベリーの灰色かび病と斑点病に適用されています。クレソキシムメチル・・・47.0%。
受粉方法
人工授粉
ブルーベリーは異なる2品種を植えることで互いに受粉し合います。ブルーベリーは虫媒花で昆虫のいる環境では自然に実をつけますが、そうではない場合、人工授粉をします。花を軽く叩いて花粉を容器に集めるか、直接筆で花粉をとり、受粉作業を行います。
ミツバチによる受粉
ブルーベリーの花が咲くと、運がよければどこからともなくミツバチが飛んできて受粉をしてくれます。訪花昆虫はミツバチ以外にもハエなども受粉を手伝います。
収穫時期の見分け方と収穫のタイミング
ブルーベリーは追熟しませんので程よく熟してから収穫します。果実の収穫期や完熟サインは品種ごとに異なります。ブルーベリーは果実が藍色に染まり、軸の付け根のリングが青くなり少々盛り上がったったもの、あるいは軸の付け根が盛り上がり赤味がかったものが熟しています。(そのようなブルーリングの収穫サインが出ない品種も多くあります)果実に少しでも赤紫色の部分のある果実はまだ熟していません。ハイブッシュ品種は着色してから3日(オニール)~7日、長いもので10日程度(ブリジッタなど)、ラビットアイ品種は、着色してから熟すまでに一週間くらいかかるようです。熟したブルーベリーは果柄の付け根が盛り上がり今にも果実が落ちそうです。
個々の品種の特徴から熟期を見分ける方法
ブルーベリーには甘味系と酸味系という二種類のタイプがあります。甘くて酸味が少ない品種の熟期は見た目通り外見が青く染まったら収穫可能です。しかし酸味系という、上等なケーキの上に乗っているようなとても酸っぱい品種は収穫のタイミングが少々難しいです。酸味系の品種は外見が熟しているように見えても酸味が強く、減酸するまで日数が必要だったり、樹上に長く置きすぎると虫害に遭ってしまったり凡庸な味になってしまったりと、収穫のタイミングが独特です。酸味系の収穫時期はどれくらいたてば酸味が程よい加減になるか自分で考える必要があります。しかも長雨の前に収穫する必要がありますから、結局のところ酸味系は熟期を見極められず酸っぱいままの収穫となりがちです。
- 赤紫色が消えて紺色または青色になったら収穫できる種類・・・オニールやサウザンスプレンダーなど
- 青く染まっても数日酸味がきつい種類・・・チャンドラーやブリジッタなど酸味系
多少赤みが残っていても熟している場合もあり、ブルーリングが出ていても酸っぱい品種もあります。
ブルーベリー完熟の見分け方 3つのタイプ
ブルーベリーは品種によって完熟のサインが異なります。ブルーベリーの完熟のサインは大体以下のようになると思います。果柄(かへい)という軸の色が緑色のまま完熟するタイプの完熟サインは、果柄の付け根がブルーに染まり、少々軸が盛り上がって外れかけであるのが完熟サインです。果柄が赤色に染まるタイプのブルーベリーの完熟の見分け方は、果柄と果実の付け根に赤味が差して軸が外れそうに盛り上がっている時が完熟のサインです。そして果柄そのものが赤く染まるタイプの完熟サインの見分け方は少々難しく、軸の付け根も盛り上がらないタイプは、軸の付け根が青色になれば完熟のサインです(※2016, 筆者)。この軸の付け根が盛り上がらないタイプのブルーベリーは落果しにくいので着色してからしばらく様子を見ておいても大丈夫と思います。(出典:ブルーリングの箇所はBerry's Life, ブルーリングおよび盛り上がりの箇所はNHK, 盛り上がらない箇所は筆者。)
- 果柄の付け根がブルーになるタイプ・・・ブライトウェルやコロンブスやミスティ、リバティやオーロラ、オースチン、ヤドキンなど
- 果柄が緑のまま熟すタイプ・・・サウザンスプレンダーなど
- 果柄が果実から離れないまま熟すタイプ・・・収穫時に果皮がむけやすく果柄に残りやすい。風に強い。
初なり以降は色づいてから熟すまでの時間が早くなる傾向にあります。ブルーベリーは完熟後も樹上にしばらく置いておける品種(収穫時に皮がめくれる品種)とそうでない品種(ブルーリングが生じる品種)があります。完熟まで日数のかかる種類や早く熟す種類もあります。
老眼などで果柄の状態が見られない、面倒だという場合の完熟の見分け方は房から指でポロリと果実が取れるような果実が完熟です。あるいは1、2個落果しはじめたら収穫時期が来ているといえます。果実が青色に染まり赤味が残っていないものは完熟かどうかは外見から分からないものの収穫適期であると言えます。レカのように完熟に至った瞬間落果してしまう種類もありますので、個々の品種の特徴により、収穫の見分け方が異なります。実際には熟した果実と糖度が乗り切っていない果実を完璧に見分けることはできませんのであまり深く考えないようにしましょう。(06, 2017, 筆者)
ラビットアイ、栽培7年以上で1度に300g以上採れました。いまのところこれに置き換わる品種が育ってなく一番適応性があるので種子のざらつきに不満を覚えつつも糖度もそこそこ出るのでジャム用に育てています。ブルーベリーは必ずしも完熟まで待つ必要はありません。特にハイブッシュベリーは収穫時期と梅雨(雨季)が重なりますので雨が続くと果実が腐敗して虫が果実の中に涌いてしまうことがあります。ですのでハイブッシュベリーは果実全体に赤い色素がなくなり青色に染まったら収穫してしまってもよいでしょう。出荷する場合も完熟まで待っていては果実品質が劣ります。害虫の項でも述べました通り、やけに柔らかい果実を食する場合、中に虫がいないか確認したほうがよいでしょう。滅多にないことでも稀にあることですが、ラズベリー同様に隠れたところにスリップスという極小の害虫がいる場合もあります。近年発売された最新品種は完熟まで待たなくても減酸しているものもありますので早採りでも甘くて酸味がきつくないブルーベリーを収穫するためには新しい品種を導入するという方法もあります。生で食べる場合、平均より柔らかすぎる実は半分に切ってみて腐って虫が涌いていないか確かめたほうが無難です。
収穫したブルーベリーは洗って冷蔵庫で冷やして頂きます。ブルーベリーパイやマフィンにしたり、残りは冷凍庫で保存します。
収穫時期が遅れる原因
余談ですが、ブルーベリーの熟期が遅れたり早くなったりすることがあります。私が観察した限りでわかることを述べるとブルーベリーが早く熟す原因は天候によるものと、木が若くて健康であること、病害虫によるものの三通りがあると思います。病害虫の場合、ベリーは早く熟すものの甘味もなく中身も食べられたものではありません。ベリーの熟期が遅れる原因としては、着果過多によるもの、枝が不健康であることが考えられます。この場合は新梢の発生の乏しさを見るとわかると思います。
おすすめのブルーベリーの育て方の本のご紹介
ブルーベリー栽培でおすすめの本を紹介したいと思います。ブルーベリーは人気の果樹で、栽培人口も多く、本を見なくても栽培できますが、やはり基本は本から学んでおいたほうがよいと思います。専門書には生物学的な図解ものっておりますので、ブルーベリーのことを理解しやすくなります。最も簡単な本はNHKの趣味園です。
ブルーベリー (NHK趣味の園芸・よくわかる栽培12か月栽培ナビ) まったくはじめての方におすすめの本です。2017年出版の新しい本です。旧版のブルーベリーの育て方(2002年)も簡単な内容なのでおすすめです。 |
おすすめブルーベリーの苗木のご案内
冒頭で紹介しましたいくつかのブルーベリーの品種の中でおすすめの苗木を紹介します。オニール、スパルタン、パウダーブルーはブルーベリーを栽培するうえでも是非所有しておきたい風味が良好な有名品種です。アマゾンで買えるお手軽ブルーベリーセットです。
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ブルーベリーの苗木を扱っているお店
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著者執筆の栽培経験などのアーカイブのページです。
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- ブルーベリーオニールの受粉相性 : アメリカの論文などから情報を得ました。
- ブルーベリーの栽培記録 2019年 : 生命とエネルギーを考慮するようになりました
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- ブルーベリーの栽培記録 2018年 : ブルーベリーのために英会話教室に通い出し、やたら詳しく考察するようになりました。
- ブルーベリーの栽培記録 2017年 : 学びをを深めていきました。
- ブルーベリーの栽培記録 2016年 : ちょっとは考えるようになりました。
- ブルーベリーの栽培記録 2015年 : やっぱりまだ初心者から抜け出せません。
- ブルーベリーの栽培記録 2014年 : まだまだ初心者です。
- ブルーベリーの栽培記録 2013年 : 栽培開始!超初心者の日記です。
参考文献
このページで利用した文献はブルーベリーの育て方 参考文献リストからご覧いただけます。
ブルーベリーコラム
ブルーベリー大好き!な作者のつぶやきです。
カタログの表現から栽培に適した品種を考える
ブルーベリーのカタログには樹勢と収穫量の傾向について書かれてます。私は今まで樹勢強い、収穫は豊産性といった組み合わせのブルーベリーがなんとなく最強のように思えていいイメージを持っていました。しかしある時こう思いました。「もしかして樹勢が強くて生産量は中くらいのほうが良いのでは?」と。なぜなら樹勢強くて豊産性の品種といえども、花芽を減らさないとかえって収穫量が落ち込んでしまうことがあったからです。花芽を減らす労力の省力化を思うと樹勢は強くて生産性は中くらいのほうがちょうどよいのでは?と思いました。果実が品種改良で大きくなるほどブルーベリーは花芽の数を減らさないといけません。
しかし実際に収穫量が中と書かれている品種は鉢植えの状態では体感的に収穫量が少ないことがわかりました。花房(かぼう)1房に付く果実の数や大きさは品種によって異なります。鉢栽培でも収穫量が「中」の品種は物足りなく感じ、収穫量が「多い」品種は育てていて頼もしく思いました。そしてやはり美味しい品種は可能な限り大きな植木鉢で育てたほうが楽しいと思います。3年目あたりに食べてみてこれは特別扱いしたいと思う品種がベストなブルーベリーです。
日本のブルーベリー生産量は世界で何番目?
アメリカ農務省(USDA)の発表したデータに「世界のブルーベリーの生産量」というデータがあります。このデータの中には日本という言葉すら入っておらず、その原因はFAOのデータベースの生産量が中国台湾とともに空白になっているからでした。中国のデータがないので正確な順位はわかりませんが、日本はFAOに計上されているブルーベリーの生産量では2014年の時点で12番目くらいに位置するのではないかと思われます。
あとがき
趣味栽培とはいえ、かなり勉強しましたので学んだことがお役に立てれば幸いです。
ブルーベリーはまだ日本では科学的な研究はやってないみたいなので、特に興味深いところ、つまり日本でまだ認識されていないことはアメリカの公式文書から最近の情報についてご紹介してみました。剪定や摘蕾方法については異論があるとは思いますが、2タイプに分けたことは趣味の個人が観察の末発見した見解ですのでご容赦ください。100円ショップの回収ネットで鉢を覆う方法は少なくとも私が自力で2014年あたりに発見しましたがそれより先に気づいた人もいるかもしれません。完熟期の見分け方が3種類あることに気づいたのは2016年頃です。もちろん既に知っておられる方もいらっしゃることでしょう。
著作権について
詳細はプライバシーポリシーをご覧ください。©2013-2019 Naturier Birdlove all rights reserved.
更新履歴
- 2018年7月3日 : カタログ写真のような果実を得る剪定と葉芽と蕾の比率の計算方法について書き足しました。
- 2018年3月26日:コガネムシの幼虫の写真を掲載し、対策を書きました。ハスクチップについて観察した見解を述べました。
- 2017年8月8日:ブルーベリーの房と夏季剪定、Stem Blightについて独自の見解を執筆しました。
- 2017年8月2日:ブルーベリーの収穫量とジャムのコストについての考察を執筆しました。
- 2017年7月2日:果実の中の害虫の写真と対策を追加しました。
- 2017年4月24日:アブラムシとミツバチの写真を追加しました。
- 2017年3月6日:植え替えについて詳しく解説しました。
- 2017年2月26日:1月2月の作業を脳卒中のリスクが高まるため非推奨としました。
- 2017年1月7日:挿し木の注意点について書きました。
- 2016年12月14日:ページURLを変更しSSL完全対応しました。